美容師のひとり親控除2026|35万円引ける3つの条件

窓辺の机で無地の書類にペンで記入する美容師の手元と、シザー・コーム・子ども用ヘアブラシ・丸い手鏡

ひとり親として子どもを育てながら働く美容師の方は、確定申告で35万円の「ひとり親控除」を受けられる場合があります。

面貸しや業務委託で働く美容師の方は、自分で確定申告をします。会社がやってくれる年末調整はありません。だからこそ、自分で申告書に書かないかぎり、使える控除は反映されないままです。ひとり親控除はその代表格です。レシートも領収書もいりません。条件に当てはまるかどうかだけで決まります。この記事では、国税庁が公開している内容をもとに、条件と手順を順番に整理します。

ひとり親控除とは?所得から35万円を引ける制度です

ひとり親控除は、所得税の「所得控除」のひとつです。控除額は35万円です。令和2年分(2020年分)の所得税から始まりました。

ここで先にお伝えしたいことがあります。35万円がそのまま戻ってくるわけではありません。控除は「税金そのもの」ではなく「所得から引く金額」です。引いたあとの金額に税率をかけて、納める所得税が決まります。

では、実際にどのくらい軽くなるのか。所得税の税率は、課税される所得金額に応じて5%から45%までの7段階に分かれています。下の段にいる方ほど、控除で減る金額は小さくなります。目安は次のとおりです。

課税される所得金額税率35万円を引いたときに軽くなる所得税の目安
1,000円〜1,949,000円5%約17,500円
1,950,000円〜3,299,000円10%約35,000円
3,300,000円〜6,949,000円20%約70,000円

※この表は所得税だけの目安です。控除を引いたことで税率の段が下がる場合は、金額が変わります。また、実際にはこのほかに復興特別所得税もかかります。

数万円と聞くと、小さく感じるかもしれません。ただ、シザー1丁分やカラー剤のまとめ買い1回分にあたる金額です。書き忘れるのは、やはりもったいないところです。

受けられる3つの条件。「500万円」は売上ではありません

国税庁は、ひとり親を次のように説明しています。その年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと、または配偶者の生死が明らかでない一定の人のうち、次の3つすべてに当てはまる人です。

  • 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
  • 生計を一にする子がいること
  • 合計所得金額が500万円以下であること

判定の基準日は12月31日です。年の途中の状況ではありません。ひとつずつ、美容師の働き方に置きかえて見ていきます。

条件1:事実婚の相手がいないこと

離婚や死別のあと、再婚していないことが前提です。そのうえで、事実婚の状態でもないことが求められます。国税庁の質疑応答では、住民票に「未届の夫」「未届の妻」といった記載がないかが例として挙げられています。まずは自分の住民票を一度確認しておくと確実です。

条件2:生計を一にする子がいること

同じ財布で暮らしている子どもがいることが必要です。子どもの側にも条件があります。これはこのあとの章で詳しく説明します。

条件3:合計所得金額が500万円以下であること

ここでいちばん誤解が多いのが「500万円」です。これは売上ではありません。「合計所得金額」です。

事業所得で申告している美容師の方の場合、大まかには次の流れになります。

  • 1年間の売上を集計する(指名売上や歩合など、入ってくるお金の合計)
  • そこから面貸し料・カラー剤・シザー・講習費などの必要経費を引く
  • 青色申告をしていれば、さらに青色申告特別控除を引く
  • 残ったものが事業所得になる

この事業所得などを合計したものが、合計所得金額です。売上そのものではない、という点だけは押さえてください。

たとえば、面貸しで年間の売上が620万円あったとします。面貸し料・カラー剤・シザー・講習費・交通費などの経費が220万円だったとします。この場合の所得は400万円です。500万円以下ですから、ほかの条件を満たせばひとり親控除の対象になります。

売上だけを見て「500万円を超えているから、うちは無理だ」とあきらめてしまう方がいます。判定に使うのは、経費を引いたあとの所得です。まずは帳簿で確認してください。どこまで経費にできるかは美容師の経費のページも参考になります。

なお、ひとり親控除は男女どちらでも受けられます。以前は男性向けに「寡夫控除」がありました。こちらは令和2年分からひとり親控除に変わっています。父子家庭の美容師の方も対象です。

子どもの条件。年齢の制限はなく、2026年分から所得62万円以下

「生計を一にする子」には、国税庁が示している条件があります。次の2つです。

  • その年分の総所得金額等が、決められた金額以下であること
  • 他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと

このうち、子どもの所得の上限は年分によって変わります。ここ数年で2回動いているので、注意が必要です。

年分子の総所得金額等の上限
令和2年分〜令和6年分(2020年分〜2024年分)48万円以下
令和7年分(2025年分)58万円以下
令和8年分(2026年分)以後62万円以下

62万円という金額は、令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用されるものです。つまり2027年の春に提出する2026年分の申告から関係してきます。施行日前の取り扱いについては、国税庁が公開しているQ&Aで確認できます。

16歳未満の子どもでも対象です

扶養控除は、16歳未満の子どもには使えません。そのため「うちの子はまだ小さいから関係ない」と思い込んでしまう方がいます。ひとり親控除は違います。国税庁は、ひとり親控除の要件である「生計を一にする子」の年齢に制限はない、と明記しています。実際に14歳と10歳のお子さんがいる例で、ひとり親控除を受けられると示されています。

子どもを青色事業専従者にしていても対象になり得ます

お子さんに受付や予約の管理を手伝ってもらい、青色事業専従者給与を払っている方もいます。この場合はどうなるのか。国税庁の質疑応答には、専従者給与が96万円でほかに収入のない娘さんの例があります。娘さんが青色事業専従者であっても、3つの要件を満たしていればひとり親に該当する、という回答です。

ただし、子どもの総所得金額等が上限を超えていないかどうかは、必ず確認してください。ここを超えると要件から外れます。

寡婦控除(27万円)との違いと、住民税の扱い

似た名前の制度に「寡婦控除」があります。控除額は27万円です。

寡婦控除は、ひとり親に該当しない人が対象です。その年の12月31日の現況で、次のどちらかに当てはまる人が対象になります。なお、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいる場合は対象外です。

  • 夫と離婚した後に再婚しておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
  • 夫と死別した後に再婚していない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人(この場合は扶養親族の要件がありません)

ここでいう「夫」は、民法上の婚姻関係にある人を指します。

順番で整理すると分かりやすくなります。まず、ひとり親に当たるかを見ます。当たればひとり親控除35万円です。当たらない場合に、寡婦控除27万円の条件を見ます。両方を同時に受けることはありません。

住民税にも同じ種類の控除があります

ここまでは所得税の話です。住民税にも、基本的には所得税と同じ種類の所得控除があります。ただし総務省は、所得税のほうが個人住民税より控除額が大きいものが多い、と説明しています。住民税での正確な控除額は、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。

申告の手順チェックリストと、去年までの分を忘れていたとき

今年の申告でやること

  1. 12月31日時点の状況を確認する(再婚していないか、事実婚の相手がいないか)
  2. 住民票に「未届の夫」「未届の妻」の記載がないかを確認する
  3. 帳簿を締めて、売上から経費を引いた所得を計算する
  4. 合計所得金額が500万円以下かどうかを確かめる
  5. 子どもの総所得金額等が、その年分の上限以下かを確かめる
  6. 子どもが元配偶者などの扶養親族になっていないかを確認する
  7. 確定申告書のひとり親控除の欄に記入して提出する

e-Taxの確定申告書等作成コーナーを使う場合は、画面の案内に沿って答えていけば反映されます。申告全体の流れが不安な方は確定申告の代行サービスのページもご覧ください。

過去の申告で書き忘れていたとき

去年も一昨年も条件を満たしていたのに、控除の欄が空欄のままだった。そういう方もいらっしゃいます。この場合は「更正の請求」という手続きができる場合があります。

更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。国税庁の確定申告書等作成コーナーには、更正の請求書を作成できる画面が用意されています。作ったデータはe-Taxで送ることも、印刷して税務署に郵送することもできます。

注意点もあります。所得控除を追加しても、最終的な税額が変わらない場合は更正の請求ができません。もともと所得税が0円だった年などが、これにあたります。

逆に、納める税金が少なすぎたことに気づいた場合は「修正申告」で直します。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません。どちらの向きであっても、気づいたら早めに動くほうが有利です。

よくある質問

元夫から養育費をもらっています。ひとり親控除は受けられますか。

養育費を受け取っていること自体で、受けられなくなるわけではありません。ポイントは、お子さんが誰の扶養親族になっているかです。

国税庁は、元夫が養育費などを継続して負担し、お子さんと生計を一にしていると認められる場合について説明しています。この場合、お子さんが元夫の扶養親族に該当するときは、その子を自分の扶養親族として扱えません。ひとり親控除の「他の人の扶養親族になっていない子」という条件にも関わります。どちらが扶養に入れるのかは、事前に話し合って決めておくと安心です。

業務委託で報酬から源泉徴収されています。ひとり親控除で税金は戻りますか。

源泉徴収されている所得税は、確定申告で1年分をまとめて精算します。ひとり親控除を入れると課税される所得が減りますので、結果として還付が増えることがあります。

ただし、いくら戻るかは所得や他の控除によって変わります。もともと源泉徴収されている金額が少なければ、戻る金額もその範囲までです。報酬明細と帳簿を突き合わせて計算してみてください。

今年の途中で離婚しました。今年分から使えますか。

ひとり親控除は、その年の12月31日の現況で判定します。12月31日の時点で3つの要件をすべて満たしていれば、その年分から使えます。

逆に、年の途中で再婚した場合や、12月31日の時点で事実婚の状態にある場合は対象になりません。判定は年末の状況で行う、と覚えておいてください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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