美容師の所得税はいくら?2026|基礎控除104万円で計算

美容師の所得税は、売上ではなく手元に残った「もうけ」にかかります。2026年分からは基礎控除が104万円に上がり、去年と同じ働き方でも税金が下がる方が多くなります。
「今年はいくら税金を払うんだろう」。年の後半になると、こう考える美容師の方は多いと思います。ところが、所得税の計算は雑誌にもサロンにも書いてありません。
この記事では、面貸しや業務委託で働く美容師の方を想定して、所得税がどう決まるのかを順番に説明します。実際の数字を入れた計算例も載せますので、ご自分の数字に置きかえて読んでみてください。
所得税は「売上」ではなく「もうけ」にかかります
まず、ここが一番大事なところです。所得税は売上全部にかかるわけではありません。
国税庁は、事業所得の金額を「総収入金額-必要経費」と定めています。美容師の言葉に直すと、次のようになります。
| 言葉 | 美容師の場合の中身 |
|---|---|
| 総収入金額(売上) | カット・カラー・パーマの代金、指名料、店販の売上など |
| 必要経費 | 面貸し料、カラー剤やパーマ液、シザーの研ぎ代、講習費、スマホ代の事業分など |
| 事業所得(もうけ) | 売上から経費を引いた残り |
売上が500万円でも、経費が250万円なら、もうけは250万円です。税金はこの250万円をもとに計算します。
もうひとつ注意点があります。業務委託で報酬から税金が引かれている方は、通帳に入った金額ではなく、引かれる前の金額が売上です。振込額を売上にすると、売上を少なく数えてしまいます。
所得税は5つのステップで決まります
所得税の計算は、上から順に引いていくだけです。順番は次のとおりです。
- 1年分の売上を集める(1月1日から12月31日まで)
- 必要経費を引く
- 青色申告特別控除を引く(最大65万円)
- 所得控除を引く(基礎控除、社会保険料控除など)
- 残った金額に税率をかける
3の青色申告特別控除は、青色申告をしている方だけが引ける金額です。正規の簿記(一般的には複式簿記)で帳簿をつけ、期限内に申告することが条件です。さらにe-Taxで送るか、優良な電子帳簿の要件を満たすと65万円になります。この条件を満たさない場合は55万円、条件に当てはまらない青色申告の方は10万円です。
4の所得控除は、基礎控除だけではありません。美容師の方がよく使うものを挙げておきます。
- 基礎控除(誰でも引ける)
- 社会保険料控除(国民年金・国民健康保険など、払った全額)
- 小規模企業共済等掛金控除(小規模企業共済やiDeCoの掛金)
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- 医療費控除、ふるさと納税などの寄附金控除
- 配偶者控除・扶養控除(家族の所得によります)
ここを引き忘れると、そのまま税金が増えます。1年分の証明書や納付書は、封を開けたらまとめて1か所に入れておいてください。
5でかける税率は、国税庁の速算表で決まっています。もうけが増えるほど税率が上がるしくみです。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
※課税される所得金額は1,000円未満を切り捨てます。1,800万円を超える部分の税率は40%、4,000万円以上は45%です。
この所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。原則として所得税額の2.1%です。なお、2027年1月1日以後に生じる所得については、復興特別所得税の税率は1.1%に下がります。
表の見方で1つだけ注意があります。税率が上がっても、もうけ全部に高い税率がかかるわけではありません。増えた部分にだけ上の税率がかかるしくみです。指名が増えて売上が伸びても、いきなり手取りが逆転することはありません。
2026年分から基礎控除が104万円に上がります
ここが今年の一番大きな変更点です。基礎控除は、誰でも引ける所得控除です。この金額が引き上げられました。
国税庁の資料によると、金額は次のとおりです。
| その年の合計所得金額 | 2025年分 (令和7年分) | 2026年分・2027年分 (令和8・9年分) |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 | 104万円 |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 | 104万円 |
| 489万円超655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
合計所得金額とは、1年間のもうけの合計です。美容師の仕事だけで生活している方なら、事業所得の金額がそのまま合計所得金額になります。
つまり、もうけが489万円以下の方は、2026年分の基礎控除が104万円になります。フリーランスの美容師の多くがこの範囲に入ります。
たとえば、もうけが200万円の方の基礎控除は、2025年分は88万円でした。それが2026年分は104万円です。16万円多く引けるので、税率5%の方なら所得税が約8,000円減る計算になります。
注意点を2つだけ。この改正は2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。そして104万円は2026年分と2027年分の金額です。2028年分以後はまた区分が変わり、合計所得金額132万円以下は99万円、それを超えると62万円になります。
【計算例】売上480万円の面貸し美容師の所得税
実際に数字を入れてみます。面貸しで働くAさんの2026年分を例にします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上(指名料・店販を含む) | 480万円 |
| 面貸し料(月12万円×12か月) | 144万円 |
| カラー剤・パーマ液・シャンプー類 | 36万円 |
| シザーの研ぎ代・コーム・タオルなど | 10万円 |
| 講習費・セミナー代 | 10万円 |
| スマホ代・予約システム代の事業分 | 6万円 |
| その他(交通費・名刺・損害保険など) | 14万円 |
| 経費の合計 | 220万円 |
売上480万円から経費220万円を引くと、もうけは260万円です。ここから順番に引いていきます。
- もうけ 260万円 - 青色申告特別控除 65万円 = 事業所得 195万円
- 事業所得 195万円 - 基礎控除 104万円 - 社会保険料控除 50万円 = 41万円
- 41万円 × 5% = 20,500円
- 20,500円 + 復興特別所得税(2.1%)430円 = 約20,900円
社会保険料控除の50万円は、国民年金と国民健康保険を1年間に50万円払ったと仮定した金額です。実際の金額は住んでいる市区町村や前年の所得で変わります。ご自分の納付書や控除証明書で確かめてください。
ここで注目してほしいのが、青色申告特別控除の効き方です。同じAさんが白色申告だった場合と比べてみます。
| 青色申告(65万円) | 白色申告 | |
|---|---|---|
| もうけ | 260万円 | 260万円 |
| 青色申告特別控除 | 65万円 | なし |
| 基礎控除+社会保険料控除 | 154万円 | 154万円 |
| 課税される所得金額 | 41万円 | 106万円 |
| 所得税+復興特別所得税 | 約20,900円 | 約54,100円 |
働き方も売上もまったく同じです。それでも差は約33,200円あります。帳簿のつけ方を変えるだけで、これだけ違います。
さらに、青色申告特別控除で事業所得が下がると、その金額をもとに計算される住民税や国民健康保険にも影響します。住民税や国民健康保険は所得税とは控除額が違うため、この記事の金額とは別に計算されます。
所得税を減らすためにできること【チェックリスト】
計算の順番がわかると、どこを直せば税金が下がるかも見えてきます。年内にできることから確認してください。
1. 経費の取りこぼしをなくす
一番効くのはここです。現金で買ったシザーのメンテナンス代、講習の交通費、コンビニで買ったお客様用のドリンク。レシートが手元にないと、経費に入れられません。
何が経費になるかは美容師の経費の考え方のページにまとめています。迷いやすい項目から確認してみてください。
2. 青色申告にして、65万円の条件を満たす
65万円を引くには、複式簿記での記帳と、期限内の申告が必要です。さらにe-Taxで送るか、優良な電子帳簿の要件を満たすことが条件になります。紙で出すと55万円になります。
3. 払った社会保険料は全額引く
国民年金や国民健康保険は、その年に実際に払った金額の全額が控除の対象です。過去の分をまとめて払った年は、その年に全額引けます。証明書や納付書を捨てないでください。
4. 毎月の帳簿をためない
12月末になってから1年分をさかのぼると、必ず思い出せないものが出ます。月に1回、レシートをまとめて送るだけでも、正確さはまったく変わります。
5. 申告と納付の日程を押さえる
2026年分の確定申告は、2027年2月16日から3月15日までに行います。所得税の納付期限も同じ日です。この期限を過ぎると、青色申告特別控除は65万円ではなく10万円になります。
6. 納税用のお金を先に分けておく
美容師の方が一番困るのは、金額よりも「そのときに現金がない」ことです。売上が入った月に、いくらか別の口座に移しておくと安心です。
所得税だけでなく、住民税と国民健康保険も同じ所得をもとに計算されます。前年の税額が一定額以上になると、翌年に予定納税として前払いを求められることもあります。3月に払って終わりではない、と考えておいてください。
帳簿づけから申告書の提出まで任せたい方は、確定申告代行のサービス内容もあわせてご覧ください。
よくある質問
もうけが少なくて所得税が0円でも、確定申告はしたほうがいいですか?
したほうがよい場面が多いです。青色申告特別控除の65万円・55万円は、期限内に申告書を出すことが条件です。出さない年があると、その年は使えません。また、報酬から税金が引かれている方は、申告しないと払いすぎた分が戻ってきません。住民税や国民健康保険の計算にも申告内容が使われます。
基礎控除104万円は、美容師なら誰でも使えますか?
その年の合計所得金額が489万円以下であれば104万円です。489万円を超えて655万円以下なら67万円、655万円を超えて2,350万円以下なら62万円になります。これは2026年分と2027年分の金額で、2028年分以後は区分が変わります。
報酬から税金が引かれています。もう払い終わっているのでは?
引かれているのは所得税ですが、あくまで先に預けている前払いです。1年分を計算した結果、預けた金額のほうが多ければ差額が戻り、足りなければ差額を納めます。どちらになるかは確定申告をしないと分かりません。引かれた金額が書かれた報酬明細は、すべて残しておいてください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
まずは無料相談から
「自分の場合いくらになるのか」だけでも構いません。公式LINEで無料相談を受け付けています。










