美容師の生命保険料控除2026|子育て中は6万円に拡大

美容師さんが毎月払っている生命保険や医療保険の保険料は、シザーや材料費のような「経費」にはなりませんが、確定申告書に書けば所得から差し引けます。2026年分(令和8年分)からは、23歳未満のお子さんがいる方の枠が広がりました。
保険料は経費にならない。でも「控除」で引けます
面貸しやシェアサロンで働く美容師さんから、よくこんな質問をいただきます。
「毎月1万円くらい生命保険を払っています。これって経費になりますか?」
答えは「経費にはなりません」です。経費というのは、その売上をあげるために直接かかったお金のことです。シザーも、カラー剤も、面貸し料も、お客様の髪を切って売上をつくるために使ったお金なので経費になります。
一方、ご自身の生命保険は、美容師の仕事をしていなくても入るものです。だから事業の経費には入れません。
ただし、まったく引けないわけではありません。保険料は「生命保険料控除」という別の入口から差し引けます。これは所得控除といって、経費を引いたあとの所得からさらに差し引ける枠です。経費として引くか、控除として引くかの違いはありますが、どちらも最終的な税金を下げてくれます。
どこまでが経費でどこからが控除なのか、迷ったときは美容師の経費の考え方をまとめたページもあわせてご覧ください。
「経費にならないから捨てていい」ではありません
ここがいちばん大事なところです。経費にならないと聞いて、保険会社から届く控除証明書を捨ててしまう方がいます。これは本当にもったいないです。
サロンに雇われている美容師さんなら、年末調整で会社が処理してくれます。でも面貸し・業務委託・シェアサロンで働く方や、自分のサロンを持っている方には年末調整がありません。自分で確定申告書に書かなければ、控除は1円も引かれないままです。
控除額の計算|3つの区分と、合計12万円の上限
生命保険料控除は、次の3つに分かれています。
- 一般の生命保険料(死亡保険など)
- 介護医療保険料(医療保険や介護保険など)
- 個人年金保険料(条件を満たした個人年金)
それぞれで計算した金額を足したものが控除額です。ただし、3つを合計した金額が12万円を超える場合、控除額は12万円が上限になります。
注意したいのは、払った保険料がそのまま引けるわけではないことです。年間10万円払っても10万円引けるわけではありません。次の表に当てはめて計算します。
2012年(平成24年)1月1日以後に契約した保険
| 年間に払った保険料 | 控除できる金額 |
|---|---|
| 20,000円以下 | 払った保険料の全額 |
| 20,000円超 40,000円以下 | 保険料×1/2+10,000円 |
| 40,000円超 80,000円以下 | 保険料×1/4+20,000円 |
| 80,000円超 | 一律40,000円 |
この表を、3つの区分それぞれに当てはめます。たとえば医療保険を年6万円払っていれば、60,000円×1/4+20,000円で35,000円が控除額です。
2011年(平成23年)12月31日以前に契約した保険
専門学校を出てすぐに入った保険など、古い契約はこちらの表になります。区分は「一般の生命保険料」と「個人年金保険料」の2つだけです。
| 年間に払った保険料 | 控除できる金額 |
|---|---|
| 25,000円以下 | 払った保険料の全額 |
| 25,000円超 50,000円以下 | 保険料×1/2+12,500円 |
| 50,000円超 100,000円以下 | 保険料×1/4+25,000円 |
| 100,000円超 | 一律50,000円 |
新しい契約と古い契約の両方がある場合は計算のしかたが少し複雑になりますが、保険会社から届く控除証明書に「新制度」「旧制度」と書かれています。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、証明書の金額を入力するだけで自動で計算してくれます。
2026年分から変わったこと|23歳未満の子がいると一般枠が6万円に
ここが今年の新しいところです。2026年分(令和8年分)以降の申告では、23歳未満の扶養親族がいる方に限り、「一般の生命保険料」の枠が広がりました。対象は2012年1月1日以後に契約した保険(新契約)です。
| 年間に払った一般の生命保険料 | 控除できる金額 |
|---|---|
| 30,000円以下 | 払った保険料の全額 |
| 30,000円超 60,000円以下 | 保険料×1/2+15,000円 |
| 60,000円超 120,000円以下 | 保険料×1/4+30,000円 |
| 120,000円超 | 一律60,000円 |
上限が40,000円から60,000円に上がっています。広がるのは「一般の生命保険料」だけで、医療保険やがん保険の枠、個人年金の枠は変わりません。
「23歳未満の扶養親族」とは
扶養親族というのは、その年の12月31日時点で次のすべてに当てはまる方です。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)であること
- 生計を一にしていること(同じ財布で暮らしていること)
- 年間の合計所得金額が62万円以下であること(2026年分から。2025年分までは58万円以下)
- 青色事業専従者として給料をもらっていない、白色の事業専従者でもないこと
ここで勘違いしやすいのが年齢です。扶養控除(16歳以上の家族について38万円などを引ける控除)の対象になるのは16歳以上の方だけですが、この6万円の枠で言う「扶養親族」には年齢の下限がありません。つまり、0歳でも3歳でも、上の4つに当てはまれば扶養親族です。
小さいお子さんがいて「うちは扶養控除が使えないから関係ない」と思っていた方こそ、今年は確認してみてください。
合計12万円の上限は変わっていません
ここは正直にお伝えしておきます。一般の枠が6万円に広がっても、3つの区分を合計した上限12万円は据え置きです。
たとえば生命保険・医療保険・個人年金の3つすべてに十分な金額で入っている方は、改正前からすでに4万円+4万円+4万円で12万円に届いています。一般の枠が6万円になっても、合計は12万円のままです。この場合、今年の改正で増える控除はありません。
今回の改正で得をするのは、「生命保険には入っているけれど、医療保険や個人年金はまだ」という方です。美容師さんは若いうちに死亡保険だけ入っているケースが多いので、当てはまる方は少なくないはずです。
美容師の場合、税金はどれくらい減る?
具体的な数字で見てみます。あくまで計算の考え方を示す例で、実際の金額はその方の所得によって変わります。
例1:面貸しで働く美容師さん(3歳のお子さんあり)
生命保険を月8,000円、年間96,000円払っているとします。契約は2015年で、新契約にあたります。医療保険や個人年金には入っていません。
- 2025年分まで:96,000円は「80,000円超」なので、控除は一律40,000円
- 2026年分から:23歳未満のお子さんがいるので、96,000円×1/4+30,000円=54,000円
控除が14,000円増えました。課税される所得が195万円以上330万円未満の方なら所得税の税率は10%なので、所得税は1,400円ほど軽くなる計算です。住民税にも生命保険料控除がありますので、実際にはもう少し下がります。
例2:書き忘れていた美容師さん
もっと大きいのは、そもそも書いていなかった場合です。生命保険・医療保険・個人年金に入っていて、上限いっぱいの12万円が引けるのに申告書の欄が空欄だったとします。
課税される所得が250万円(税率10%)の方なら、120,000円×10%で所得税が約12,000円違います。住民税の分を加えると、もっと差が出ます。指名を1本増やすより、証明書を1枚出すほうが早いこともあるのです。
なお所得税の税率は、課税される所得が195万円未満なら5%、195万円以上330万円未満は10%、330万円以上695万円未満は20%と段階的に上がります。所得が大きい方ほど、同じ控除額でも減る税金は大きくなります。
年末調整がない美容師のチェックリスト
秋から申告までにやることを、順番に並べます。
- 控除証明書を保管する/秋以降、保険会社から「生命保険料控除証明書」というはがきや封書が届きます。捨てずに、レシートとは別の封筒にまとめておいてください。
- 区分を確認する/証明書には「一般」「介護医療」「個人年金」のどれか、そして「新制度」「旧制度」のどちらかが書かれています。この2つが計算の分かれ道です。
- 12月31日時点の家族構成を確認する/23歳未満のお子さんがいるかどうかで、一般の枠が変わります。今年生まれたお子さんも対象です。
- 帳簿では経費にしない/保険料を事業用の口座から引き落としている方は、材料費や消耗品費といった経費の科目に入れないでください。青色申告の帳簿では「事業主貸」という科目で処理するのが一般的です。
- 確定申告書に書いて、証明書を出す/申告書の生命保険料控除の欄に金額を記入し、証明書を添付するか、提出するときに提示します。
証明書の添付・提示には例外があります。旧制度の契約で年間保険料が9,000円以下のものと、年末調整ですでに控除を受けたものは、添付も提示も必要ありません。
対象にならない保険もあります
すべての保険が対象になるわけではありません。次のようなものは生命保険料控除に使えません。
- 保険期間が5年未満の、いわゆる貯蓄保険や貯蓄共済
- 傷害保険契約、財形貯蓄・財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄の契約
- 保険金の受取人に、ご自身・配偶者・その他の親族以外の方が入っている契約
控除証明書が送られてこない保険は、対象外である可能性があります。迷ったら保険会社に確認するのが確実です。
売上と経費の集計、控除の記入、申告書の作成までまとめて任せたい方は、確定申告の代行サービスもご用意しています。
よくある質問
保険料を事業用の口座から払っています。経費にできますか?
できません。どの口座から払っていても、生命保険料は事業の経費ではなく生命保険料控除として差し引きます。事業用の口座から引き落としている場合は、帳簿では「事業主貸」という科目で処理するのが一般的です。経費の科目に入れてしまうと、所得が実際より少なく計算されてしまいます。
iDeCoや小規模企業共済、国民年金の保険料も生命保険料控除に入れますか?
いいえ、どれも別の枠です。iDeCoと小規模企業共済は「小規模企業共済等掛金控除」で、その年に払った掛金の全額が対象になります。国民年金・国民健康保険・国民年金基金は「社会保険料控除」で、こちらも実際に払った金額の全額が対象です。生命保険料控除の12万円の上限とは別に計算するので、それぞれの欄に分けて書いてください。
控除証明書をなくしてしまいました。どうすればいいですか?
加入している保険会社に連絡すれば再発行してもらえます。申告の時期は問い合わせが混み合うので、早めに連絡するのが安心です。最近は保険会社のマイページから電子データや再発行の申し込みができることも増えています。
なお、住民税にも生命保険料控除がありますが、上限は所得税とは別に定められています。お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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