美容師の敷金・礼金2026|返ってくるお金は経費になりません

無地の契約書の上に置かれた部屋の鍵と、奥に見える美容室のセット椅子と丸い鏡、手前のシザーと観葉植物を描いた水彩イラスト

サロンやシェアサロンを借りるときに払う敷金・保証金・礼金・仲介手数料は、払った年に全部が経費になるわけではありません。どれが経費になって、どれがならないのかを整理します。

面貸しやシェアサロンを卒業して、自分の店を持つとき。最初にまとまったお金が出ていきます。家賃20万円のテナントなら、保証金120万円、礼金40万円、仲介手数料20万円。ここまでで180万円です。

この180万円を、その年の経費として全部落とせると思っている方がとても多いです。ですが、実際に払った年の経費にできるのは、この中の一部だけです。

ここを間違えると、初年度の所得を実際より低く申告してしまいます。あとから指摘されて、たりなかった税金と加算税を払うことになります。逆に、経費にできるものを見落として、払わなくてよい税金を払っている方もいます。ひとつずつ見ていきます。

サロンを借りるときのお金は、3つに分かれます

契約のときに払うお金は、税金の世界では次の3つに分かれます。名前が似ていても扱いはまったく違います。

払うお金払った年に全額経費になるか扱い
敷金・保証金(返ってくる分)ならない預けているお金。経費ではありません
敷金・保証金(返さないと決まっている分)金額による礼金と同じ扱いになります
礼金・権利金金額による20万円未満なら全額。20万円以上は数年に分けます
仲介手数料なる払った年の経費にできます
内装工事・セット椅子・シャンプー台ならない減価償却。何年かに分けます
その月の家賃・共益費なるその年の経費です

先ほどの180万円で言うと、その年に全額経費にできるのは仲介手数料の20万円だけ、ということもあります。残りは、経費にならないか、何年かに分けて少しずつ経費にしていきます。

敷金・保証金は「預けているお金」なので経費になりません

いちばん間違いが多いのがここです。

敷金や保証金は、貸す側に預けているお金です。契約が終わって出ていくときに、原状回復の費用などを引いた残りが返ってきます。つまり、あなたの手元から出ていってはいますが、なくなったわけではありません。

国税庁も、貸す側の説明の中で「敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはなりません」とはっきり書いています。貸す側が受け取っても売上にならないお金は、借りる側が払っても経費になりません。

帳簿では、経費の科目ではなく「差入保証金」などの資産として記録します。お金が財布から銀行の預金に移ったのと同じで、形が変わっただけ、という考え方です。

シェアサロンや面貸しの保証金も同じです

テナントを借りる場合だけの話ではありません。シェアサロンに入るときに預ける保証金や、面貸しの契約で預けるデポジットも、返ってくるものであれば同じ扱いです。払った年の経費にはできません。

「入会金」という名前のお金は、契約の中身によって扱いが変わります。返ってこないお金であれば、次に説明する礼金と同じ考え方になります。契約書に返還についてどう書いてあるかで決まりますので、書類をとっておいてください。

「返さない」と決まっている部分は別です

契約書に「保証金のうち20%は返還しない」「敷金から2か月分を差し引く」と書かれていることがあります。敷引き、保証金の償却などと呼ばれる部分です。

この返ってこないと決まっている部分は、最初から預けているお金ではありません。実質的には礼金と同じものなので、礼金と同じ扱いになります。

  • 保証金120万円のうち、契約で20%(24万円)は返さないと決まっている
  • 返ってくる96万円は資産。経費になりません
  • 返ってこない24万円は、礼金と同じ扱いになります

契約書を見て、この線引きを最初にしておくのがいちばん確実です。

礼金は20万円が分かれ目です

礼金や権利金は、返ってこないお金です。ですから経費にはなります。ただし、払った年に全額とは限りません。

建物を借りるために払う礼金や権利金は、税金の世界で「繰延資産」というものに分類されます。名前はむずかしいですが、意味は「効果が何年かにわたって続く支出だから、何年かに分けて経費にしましょう」というだけです。

20万円未満なら、払った年に全額経費

金額が20万円未満の繰延資産は、分けずに払った年の経費にできます。礼金が15万円なら、15万円をその年の経費にして終わりです。

この20万円かどうかは、契約ごとに判定します。2つの物件を借りているなら、それぞれの契約で見ます。

20万円以上なら、原則5年に分ける

20万円以上の礼金は、原則として5年で分けて経費にします。

  • 礼金40万円 ÷ 5年 = 1年あたり8万円
  • 初年度は、お店を始めた月から12月までの月数分だけ経費にします
  • 9月開業なら 8万円 × 4か月 ÷ 12か月 = 約2.7万円

40万円を一度に経費にしたい気持ちはわかりますが、そうはできません。残りは翌年以降に少しずつ落ちていきます。

契約が5年未満なら、もっと早く落とせることがあります

例外があります。契約の賃借期間が5年より短く、かつ更新のときにもう一度礼金を払うことがはっきりしている場合は、5年ではなくその契約期間で分けます。

  • 契約期間3年、更新時にまた礼金が必要 → 礼金40万円 ÷ 3年 = 1年あたり約13.3万円
  • 5年で分けるより早く経費にできます

ここは契約書の内容で決まります。更新のときに礼金がいるかどうかが書かれていないと、この扱いは使えません。契約前に不動産会社に確認しておくとよい部分です。なお、年数に1年未満の端数が出たときは、端数は切り捨てます。

仲介手数料は、払った年の経費にできます

意外に知られていませんが、建物を借りるときに不動産会社へ払った仲介手数料は、払った年の経費にしてよいことになっています。礼金のように何年かに分ける必要はありません。

金額が大きいことも多いので、ここを資産にしたままにしていると損をします。契約書と請求書で、礼金と仲介手数料をきちんと分けておいてください。

内装工事とセット椅子は「減価償却」になります

サロンを作るお金でいちばん大きいのが内装工事です。ここも払った年に全額は落ちません。何年かに分けて経費にしていきます。これを減価償却と言います。

内装工事は「何年で分けるか」を見積もります

借りた建物に手を入れた内装工事は、国税庁の言葉で「他人の建物に対する造作」といいます。これは、その建物の耐用年数と、工事の種類・用途・使われている材料などをふまえて、合理的な年数を見積もって決めることになっています。

電気設備や給排水設備など、建物附属設備にあたる工事をした場合は、その建物附属設備の耐用年数で分けます。

また、契約で借りる期間が決まっていて、更新ができず、かつ出ていくときに工事代を返してもらったり買い取ってもらったりできない契約の場合は、その借りる期間を年数として分けることができます。短い期間で経費にできるので、有利になることがあります。

何年で分けるかは工事の中身で変わります。工事の見積書は「内装工事一式500万円」ではなく、電気・給排水・大工工事・建具などの内訳が分かる形でもらってください。あとから分けようとすると、とても手間がかかります。

セット椅子やシャンプー台は、金額で変わります

器具や備品は、1つあたりの値段で扱いが変わります。

1つあたりの金額扱い
10万円未満買った年に全額経費にできます
10万円以上20万円未満3年に分けて経費にできます(一括償却資産)
10万円以上40万円未満青色申告なら、年間300万円まで、その年に全額経費にできます

3つめの特例は青色申告をしている人だけが使えます。この金額の上限は2026年4月1日以後に買ったものから40万円未満に広がりました。2026年3月31日までに買ったものは30万円未満が上限です。この特例は2029年3月31日までに買ったものが対象とされています。

セット椅子1台18万円を4台買ったなら、1台ずつで判定します。青色申告なら合計72万円をその年の経費にできます。白色申告だと3年に分けることになります。ここだけでも、青色申告にしておく意味は十分あります。

シザーやドライヤーなど、日々の道具の経費の考え方は美容師の経費のページにまとめています。あわせて確認してみてください。

契約したら、この5つをやってください

  • 契約書のコピーを保管する。礼金の額、賃借期間、更新のときに礼金がいるか、保証金の返還条件。この4つが分かれば扱いが決まります
  • 振込の内訳をメモに残す。まとめて180万円を振り込むと、あとから何がいくらだったのか分からなくなります。請求書の内訳を残してください
  • 保証金は経費にしない。帳簿では資産として記録します。ここを経費にしてしまう間違いがいちばん多い場所です
  • 工事の見積書を内訳つきでもらう。一式いくら、では何年で分けるかが決められません
  • 青色申告の手続きをしておく。器具備品の特例も、その他の控除も、青色申告が前提のものが多くあります

開業のときの手続きや、初年度にやることの全体像は開業サポートのページでご案内しています。

よくある質問

シェアサロンに預けた保証金も、経費にできませんか?

はい、返ってくるお金であれば経費にはできません。テナントの保証金と同じで、預けているお金という扱いになります。帳簿では資産として記録しておいてください。ただし、契約書に「一部は返還しない」と書かれている場合は、その返ってこない部分だけは礼金と同じ扱いになります。契約書を確認してみてください。

保証金が返ってきた年は、売上になりますか?

いいえ、返ってきただけでは売上にはなりません。預けていたお金が戻ってきただけだからです。帳簿では、資産が減って現金が増えた、という記録になります。なお、原状回復の費用などが差し引かれて返ってきた場合、その差し引かれた分は出ていったお金ですので、内容に応じて経費になります。明細をとっておいてください。

礼金がちょうど20万円のときは、全額経費にできますか?

できません。全額を払った年の経費にできるのは「20万円未満」の場合です。ちょうど20万円は20万円未満にあたらないので、原則どおり5年(契約期間が5年より短く、更新のときにまた礼金が必要な場合はその期間)で分けることになります。19万円と20万円で扱いが変わる、という分かれ目です。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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