美容師の住宅ローン控除2026|自宅サロンは9割が分かれ目

下の階がガラス扉の小さな美容室、上の階が住まいになった木造の家と、手前の木のトレイに置かれたシザーとコームの水彩イラスト

自宅の一部をサロンにしている美容師さんは、住宅ローン控除で戻る金額が「どれだけ仕事に使っているか」で変わります。

住宅ローン控除は、会社員のための制度だと思われがちです。ですが、面貸しや業務委託で働くフリーランス美容師も使えます。自分で確定申告をするぶん、会社員より手間はかかります。そのかわり、押さえるところを押さえれば毎年しっかり取り戻せます。

この記事では、2026年(令和8年)に住み始めた場合の金額と、自宅サロンの美容師がいちばんつまずく「床面積の割合」の話をまとめます。

住宅ローン控除は「税金そのもの」から引ける制度です

正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。住宅ローンを組んでマイホームを新築・購入し、令和4年1月1日から令和12年12月31日までの間に住み始めた場合が対象です。年末のローン残高に0.7%をかけた金額を、所得税から直接引くことができます。

ここが、シザーやカラー剤などの経費とは決定的に違うところです。経費や国民年金保険料は「もうけ」から引く仕組みです。もうけが減った結果として、税金が少し減ります。一方で住宅ローン控除は、計算し終わった税金そのものから引きます。同じ10万円でも、効き方がまったく違います。

2026年に住み始めた場合、1年あたりいくらまで引けるか

引ける金額には上限があります。上限は住宅の省エネ性能によって変わります。まず、新築または新築住宅を買った場合です。

住宅の種類(新築等)控除期間1年あたりの上限
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅13年31.5万円
ZEH水準省エネ住宅13年24.5万円
省エネ基準適合住宅13年14万円
その他の住宅(上記に当てはまらない家)0年原則として使えません

省エネ性能のない新築は、2026年に住み始めた場合は原則として対象外です。ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けた家や、令和6年6月30日までに建てられた家には経過措置があります。

次に、中古住宅(建築後に人が住んだことのある家)を買った場合です。

住宅の種類(中古)控除期間1年あたりの上限
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅13年24.5万円
ZEH水準省エネ住宅13年24.5万円
省エネ基準適合住宅13年14万円
その他の住宅10年14万円

中古住宅は、2025年(令和7年)までに住み始めた場合は控除期間が10年でした。省エネ性能のある住宅は、2026年に住み始めた場合から13年に延びています。中古のマンションを買って独立した、という美容師さんには見逃せない変更です。

さらに、次のいずれかに当てはまる人は上限が上乗せされます。国税庁が「特例対象個人」と呼んでいる人たちです。

  • 40歳未満で、配偶者がいる人
  • 40歳以上で、40歳未満の配偶者がいる人
  • 19歳未満の扶養親族がいる人

当てはまるかどうかは、住み始めた年の12月31日の状況で判定します。新築の認定長期優良住宅なら上限が35万円に、ZEH水準省エネ住宅なら31.5万円に上がります。20代から30代で独立して家を買った美容師さんは、ここを確認してください。なお、床面積が40平方メートル台の住宅については、この上乗せの対象外になる場合があります。

使うための主な条件

  • 新築や購入の日から6か月以内に住み始めていること
  • 控除を受ける年の12月31日まで、引き続き住んでいること
  • 登記簿に書かれた床面積が50平方メートル以上であること
  • 床面積の2分の1以上を、自分の住まいとして使っていること
  • その年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 返済期間が10年以上のローンであること
  • 生計を一にする親族から買った家や、贈与された家ではないこと

床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅にも、別の枠があります。この場合は合計所得金額が1,000万円以下であることなど、条件が変わります。

自宅サロンの美容師は「9割」が分かれ目になります

ここからが、美容師さんにいちばん関係する話です。1階をサロン、2階を住まいにしている家。あるいはマンションの一室にセット面を1面だけ置いている家。こうした家は税務上「店舗併用住宅」として扱われます。

ポイントは3つあります。

1つめ。床面積が50平方メートル以上かどうかを見るときは、サロン部分も含めた建物全体の床面積で判断します。サロン部分を除いて数える必要はありません。

2つめ。控除の対象になるのは、年末のローン残高のうち、住まいとして使っている部分に対応する金額だけです。サロン部分に対応する分は外れます。

3つめ。ただし、住まいとして使っている部分がおおむね90%以上なら、家の全部を住まいとして計算してかまいません。国税庁の通達に、はっきりそう書かれています。この「おおむね90%」が、自宅サロンの分かれ目です。

サロン部分が床面積に占める割合住宅ローン控除の扱い
おおむね10%以下家の全部を住まいとして計算できます
10%を超えて50%以下住まいの割合で按分した金額が対象です
50%を超える(住まいが半分未満)そもそも控除を受けられません

数字で見るとこうなります

建物全体の床面積が100平方メートルの家を例にします。年末のローン残高は3,000万円とします。

ケース1は、1階の40平方メートルをサロンにし、2階の60平方メートルに住んでいる場合です。住まいの割合は60%です。対象になるのは3,000万円のうち1,800万円ぶんです。0.7%をかけると12万6,000円になります。

ケース2は、10平方メートルの部屋にセット面を1面置き、撮影や事務作業にも使っている場合です。住まいの割合は90%です。おおむね90%以上なので、3,000万円の全部を対象にできます。0.7%をかけると21万円です。

同じ家、同じローン残高でも、差は8万4,000円です。しかも13年間続きます。サロンをどこまで広げるかは、売上と一緒にこの数字も見て決めてください。

なお、土地の購入にもローンを組んでいる場合は、土地のローンについても同じように按分します。庭の一部をお客様用の駐車場にしているようなときは、その面積も計算に関わってきます。

家事按分の割合とセットで考えてください

自宅サロンの美容師さんは、家賃や住宅ローンの利息、電気代などを面積で割って経費にしていることが多いはずです。これを家事按分といいます。

気をつけたいのは、家事按分で使う「仕事の割合」と、住宅ローン控除で使う「住まいの割合」が、同じ1軒の家の話だということです。確定申告書では「サロンが半分です」と書き、住宅ローン控除の明細書では「9割が住まいです」と書く。こうした食い違いは通りません。どちらか一方だけを都合よく決めることはできない、と考えてください。

どこまで経費にできるかで迷ったときは、美容師の経費の考え方もあわせて確認してみてください。

経費を増やすほど、控除が余ることがあります

住宅ローン控除は、税金そのものから引く仕組みです。裏を返すと、引く相手の所得税が小さいと、控除が余ってしまいます。

余った分がまったく無駄になるわけではありません。所得税から引ききれなかった金額は、翌年度の住民税から引くことができます。ただし上限があります。前年分の所得税の課税総所得金額等の5%、しかも9万7,500円までです。総務省がこの上限を示しています。なお、この住民税の控除を受けるために、市区町村へ申告する必要はありません。

面貸し美容師の例で比べてみます

年末のローン残高が3,000万円で、控除額が21万円の人を想定します。所得控除を引いたあとの課税所得が、いくらかで結果が変わります。

ケースAケースB
課税所得250万円200万円
所得税15万2,500円10万2,500円
所得税から引ける額15万2,500円10万2,500円
翌年度の住民税から引ける額5万7,500円9万7,500円(上限)
使えずに消える額0円1万円

ケースBは、ケースAより経費を50万円多く計上した状態です。経費が増えたぶん所得税は減りました。ところが、その減った分だけ住宅ローン控除が使えなくなり、1万円が消えています。

もちろん、実際に払った経費を落とさないという話ではありません。落とせる経費は落としてください。ここで言いたいのは、次の2つです。

  • 開業したての年や、もうけが小さい年は、控除を使いきれないことがある
  • どの年にいくら残るかは、シミュレーションしないと見えない

とくに、独立した年に家も買った、という美容師さんは要注意です。初年度は売上が立ちきらず、開業費や設備の支払いも重なります。控除の枠を丸ごと使えないまま1年が過ぎることがあります。

※上の計算では、復興特別所得税は考慮していません。

美容師がやる手続きと、必要な書類

会社員の場合、最初の年だけ確定申告をして、2年目からは年末調整で済みます。フリーランス美容師には年末調整がありません。つまり、控除を受ける年は毎年、自分で確定申告をします。ここを知らずに1年分を取りこぼす人がいます。

最初の年に用意するもの

  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書(確定申告書と一緒に出す用紙です)
  • 金融機関から届く「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
  • 家の登記事項証明書など、床面積がわかる書類
  • 工事請負契約書または売買契約書の写し(いくらで買ったかがわかるもの)
  • 土地のローンも対象にするなら、土地の登記事項証明書と契約書の写し
  • 補助金や住宅取得資金の贈与を受けたなら、その金額がわかる書類
  • 省エネ性能のある住宅なら、認定通知書や住宅省エネルギー性能証明書など

登記事項証明書は、計算明細書に不動産番号を書けば写しの添付を省けます。また、金融機関が「調書方式」に対応している場合は、提出書類の一部が変わります。

2年目以降に用意するもの

  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • その年の年末残高等証明書

2年目からは、この2点が基本になります。年末残高等証明書は、借りている金融機関から毎年届きます。届いたらレシートや領収書と同じ箱にまとめて入れておくと、申告のときに探さずに済みます。

自宅サロンの人が追加でやること

  • 建物全体の床面積と、サロン部分の床面積をはかって記録する
  • 住まいの割合を計算し、おおむね90%以上かどうかを確認する
  • 家事按分で使っている割合と食い違っていないかを見直す
  • 間取りや使い方を変えた年は、その年から割合を計算し直す

毎年の申告の流れごと相談したい場合は、確定申告サポートのページもご覧ください。

よくある質問

面貸しで働いていて、自宅では施術しません。それでも使えますか。

使えます。住宅ローン控除は住まいについての制度なので、働き方や職業は関係ありません。面貸しでも業務委託でも、シェアサロンでも同じです。自宅で施術をしていないなら、家の全部が住まいなので、按分の計算も必要ありません。床面積や合計所得金額、返済期間などの条件を満たしているかを確認してください。

家を買ったあとに自宅サロンを始めました。控除は減りますか。

サロンとして使い始めた年から、住まいの割合で計算し直すことになります。ただし、住まいとして使っている部分がおおむね90%以上であれば、家の全部を住まいとして計算してかまいません。セット面1面ぶんの小さなスペースなら、この範囲に収まることもあります。逆に、リビングを丸ごとサロンにしたような場合は、金額が変わる可能性があります。図面で面積を確認してから判断してください。

青色申告特別控除を使うと、住宅ローン控除は減ってしまいますか。

青色申告特別控除そのものが住宅ローン控除を減らすわけではありません。ただ、所得が下がれば所得税も下がります。その結果、住宅ローン控除を引ききれない年が出ることはあります。引ききれない分は翌年度の住民税から引けますが、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%、9万7,500円までという上限があります。青色申告をやめる理由にはなりませんので、まずは自分の数字で確かめてみてください。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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