美容師の更正の請求2026|経費の入れ忘れは5年戻せる

確定申告を出したあとで「シザー代を経費に入れ忘れた」と気づいても、あきらめる必要はありません。税金を払いすぎていたときは、申告の期限から5年以内なら「更正の請求」で取り戻せます。
確定申告を提出したあとに、間違いに気づくことはよくあります。「面貸し料の領収書が出てきた」「講習の受講料を入れ忘れた」「国民年金の控除証明書を書き忘れた」。どれも美容師の方からよく聞く話です。
提出したら終わり、ではありません。国税庁は、申告のあとで間違いに気づいた場合の直し方をきちんと用意しています。この記事では、その2つの方法を、税金の言葉を使わずに順番に説明します。
確定申告を間違えたときの直し方は2つ
直し方は、間違いの向きによって変わります。難しく考えず、「払いすぎたのか、足りなかったのか」だけで分けてください。
| 気づいた内容 | 手続きの名前 | いつまで |
|---|---|---|
| 税金を払いすぎていた(経費や控除の入れ忘れ) | 更正の請求 | 原則、申告の期限から5年以内 |
| 税金が少なすぎた(売上の計上もれなど) | 修正申告 | 税務署から更正を受けるまでいつでも。ただし早いほど有利 |
「更正の請求」は、読み方は「こうせいのせいきゅう」です。名前は硬いのですが、中身は「計算を間違えたので、払いすぎた分を返してください」と税務署にお願いする手続きです。
もう一方の「修正申告」は、反対に「税金が足りませんでした」と自分から出し直す手続きです。こちらは追加の税金を納めることになります。
申告期限の前に気づいたときは、出し直すだけ
3月の申告期限より前に間違いに気づいた場合は、更正の請求も修正申告も使いません。国税庁は「改めて申告書等を作成し、確定申告期限までに提出してください」と案内しています。いわゆる出し直しで、最後に出したものが正しい申告として扱われます。
ただし、最初の申告で還付金がすでに振り込まれていて、出し直しで還付額が減る場合や納める税金が出る場合は、精算の手続きが必要になります。還付が振り込まれたあとに出し直すときは、通帳の入金も確認しておいてください。
美容師によくある「払いすぎ」のパターン
更正の請求につながるのは、次のような入れ忘れです。実際に相談で多いものを挙げます。
- 面貸し料(席料)の領収書が、1か月分だけ抜けていた
- シザーの購入代金や研ぎ代を、経費に入れ忘れていた
- カラー剤やパーマ液、シャンプーなどの材料費のレシートが出てきた
- カット講習やセミナーの受講料を、経費として数えていなかった
- 国民年金保険料や国民健康保険料の支払いを、控除に入れていなかった
- 生命保険料の控除証明書が、年末に届いていたのに机に埋もれていた
- ヘルプで入ってもらった方に払った外注費を、計上していなかった
国税庁も、更正の請求の例として「事業所得の必要経費(地代家賃:事務所の賃借料)について12月分の計上漏れがあり、事業所得の金額が過大となっていた場合」を挙げています。面貸し料の12月分が抜けていた、という状況はまさにこれと同じ形です。
経費に入れられるものの全体像は、美容師の経費の考え方のページにまとめています。入れ忘れがないか、過去の年分と見比べてみてください。
いくら戻るのか、ざっくりの目安
戻る金額は「入れ忘れた金額 × その方の税率」で決まります。たとえばシザー12万円(税抜)と講習費8万円(税抜)、あわせて20万円(税抜)を入れ忘れていたとします。
所得税の税率が5%の区分にいる方なら、20万円(税抜)に対しておよそ1万円。復興特別所得税を加えると、もう少し増えます。税率が高い区分にいる方なら、戻る金額もその分だけ大きくなります。
金額としては小さく見えるかもしれません。ただし、所得税の申告書を出すと、住民税の申告もしたものとして扱われます(地方税法第317条の3)。所得税の中身が変われば、住民税や国民健康保険料の計算のもとになる所得も変わります。実際の反映の時期や金額は、お住まいの市区町村にご確認ください。
税額が変わらない場合は請求できない
ひとつ注意点があります。国税庁は「所得金額の増減や所得控除の追加があっても、最終的な税額または純損失の金額に異動がない場合は、更正の請求はできません」としています。
つまり、経費を足しても納める税金が元から0円で変わらないなら、手続きの対象になりません。もともと赤字だった年に少し経費を足しただけ、という場合は、赤字(純損失)の金額が増えるかどうかを見てください。
更正の請求は「申告の期限から5年以内」
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。法定申告期限とは、その年分の確定申告の締切日のことです。
| 対象の年分 | 確定申告の期限 | 更正の請求ができる期限 |
|---|---|---|
| 令和3年分(2021年分) | 2022年3月15日 | 2027年3月15日 |
| 令和4年分(2022年分) | 2023年3月15日 | 2028年3月15日 |
| 令和5年分(2023年分) | 2024年3月15日 | 2029年3月15日 |
| 令和6年分(2024年分) | 2025年3月17日 | 2030年3月18日 |
| 令和7年分(2025年分) | 2026年3月16日 | 2031年3月17日 |
3月15日が土日にあたる年は、期限が翌開庁日にずれます。上の表もそれを反映しています。期限日が土・日曜日・祝日等にあたる場合は、その翌日が期限になります。
もうひとつ、覚えておいてほしい例外があります。確定申告の必要がない方が、還付を受けるために申告書を出していた場合は、その提出した日から5年以内です。また、裁判の判決などで後から事実が変わったときは、その事実が生じた日の翌日から2か月以内という別の期限になります。
なお、そもそも申告をしていない年がある場合は、更正の請求ではなく申告そのものから始めます。過去の年分の申告は過年度の確定申告のサポートでも受け付けています。
税金が少なすぎたときは修正申告を早めに
反対に、売上の数え忘れなどで税金が少なすぎた場合は、修正申告をします。たとえば、12月にカットした分の指名売上が1月に振り込まれ、その分を売上に入れていなかった、というケースです。
修正申告は、税務署から更正を受けるまではいつでもできます。ただし、早く出すほど負担が軽くなります。ここが一番大事な点です。
タイミングで加算税が変わる
| 修正申告を出すタイミング | 過少申告加算税 |
|---|---|
| 税務署から調査の事前通知が来る前に、自分から出した | かからない |
| 事前通知のあと、調査で更正されると分かる前に出した | 新たに納める税金の5%(一定額を超える部分は10%) |
| 調査を受けたあとに出した、または更正を受けた | 新たに納める税金の10%(一定額を超える部分は15%) |
表の「一定額」とは、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額のことです。細かい線引きより、「連絡が来る前に自分から出せば加算税はかからない」という一点を覚えてください。
また、帳簿の提示を求められたのに出せなかった場合などには、加算税がさらに上乗せされる仕組みもあります(令和5年分以降が対象)。帳簿とレシートを残しておくことが、こういう場面で効いてきます。
延滞税は納めるまで日割りで増える
修正申告で新たに納める税金には、延滞税もかかります。もとの納期限の翌日から、実際に納めた日までの期間で計算されます。
- 令和8年(2026年)中の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%
- 2か月を経過した日以降は年9.1%
この割合は年によって変わります。過去の年分をさかのぼって直すときは、その期間ごとの割合で計算されるため、最新の割合は国税庁サイトでご確認ください。
新たに納める税金の納期限は、修正申告書を提出する日です。提出したその日に納めるつもりで準備しておくと、延滞税がそれ以上増えません。
実際の手順とチェックリスト
更正の請求も修正申告も、手順はほとんど同じです。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」にある「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で作成し、e-Taxで送るか、印刷して税務署に出します。
- 直したい年分の確定申告書の控えを手元に用意する
- 入れ忘れた経費のレシート・領収書、控除証明書を集める
- 正しい金額で青色申告決算書(または収支内訳書)を作り直す
- 作成コーナーで更正の請求書(または修正申告書)を作る
- 証拠になる書類を添えて、納税地を管轄する税務署に提出する
- 修正申告の場合は、提出した日に追加の税金を納める
添付する書類
更正の請求では、なぜ税金が多すぎたのかを示す書類を添えます。国税庁は次のように案内しています。
- 一定期間の取引にもとづく理由のとき(経費の計上もれなど)は、その取引の記録等にもとづき、理由の基礎となる事実を証明する書類。青色申告決算書または収支内訳書、帳簿書類の写し、支払った領収書の写しなど
- それ以外の理由のとき(控除の記載もれなど)は、理由の基礎となる事実を証明する書類。国民年金保険料の控除証明書など
面貸し料の計上もれなら、面貸し料の領収書や振込の記録と、直した帳簿の該当部分の写しがこれにあたります。e-Taxで出す場合は、本人確認書類の提示や添付は不要です。
提出先と、そのあとの流れ
提出先は、納税地を所轄する税務署長です。税務署の開庁時間は8時30分から17時まで。閉庁日は受付をしていませんが、郵送するか、時間外収受箱に投函すれば提出できます。
更正の請求を出すと、税務署がその内容を調べます。請求が正当と認められれば減額更正が行われ、その内容が通知されたうえで、納めすぎた税金が還付されます。出せばすぐ振り込まれるものではない、という点は知っておいてください。
出す前のチェックリスト
- 直したい年分の申告期限から5年を過ぎていないか
- 直した結果、納める税金や赤字の金額が実際に変わるか
- その経費が、本当にその年に使ったものか(年をまたいでいないか)
- プライベートと共用のもの(スマホ代・車など)は、使った割合で分けているか
- 証明する書類が手元にそろっているか
- 同じ年分に、逆方向の間違い(売上の計上もれ)が隠れていないか
最後の項目は見落としがちです。経費を足す一方で売上の数え忘れが見つかることもあります。両方をまとめて正しい形にしてから出すほうが、結果として手間が減ります。
よくある質問
更正の請求をすると、税務調査が来やすくなりますか。
更正の請求をしたことで調査が来る、といった取り扱いは公表されていません。ただし、国税庁は請求内容を調べたうえで判断するとしています。理由と金額の根拠を書類でそろえておくことが、いちばんの備えになります。
5年より前の年分で経費の入れ忘れが見つかりました。どうすればいいですか。
更正の請求ができるのは、原則として法定申告期限から5年以内です。それより前の年分は、残念ながら手続きの対象外になります。今できるのは、今年分の帳簿を正しくつけることです。レシートをためずに月ごとに整理しておくと、次の入れ忘れを防げます。
修正申告をすると、住民税や国民健康保険料も変わりますか。
所得税の申告書を出すと、住民税の申告もしたものとして扱われます(地方税法第317条の3)。そのため、所得税の中身が変われば、住民税や国民健康保険料の計算のもとになる所得も変わります。いつ、いくら変わるかは市区町村ごとの取り扱いになるため、お住まいの窓口にご確認ください。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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