美容師の広告宣伝費2026|掲載料・名刺・SNS広告は経費

集客のために払ったお金は、ほとんどが経費になります。ただし金額と払った時期によって、書き方が3通りに分かれます。
名刺を刷った。ショップカードを作った。集客サイトに掲載料を払った。SNSで広告を出してみた。指名を増やすために、フリーランスの美容師さんはいろいろなお金を使います。
これらはまとめて「広告宣伝費」という経費になります。国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、広告宣伝費は必要経費の科目のひとつとして案内されています。
ただ、同じ「集客に使ったお金」でも、扱いが変わることがあります。看板を作ったとき。1年分の掲載料を先に払ったとき。開業する前に配ったチラシ代。この3つは、そのまま全額を今年の経費にできるとは限りません。
この記事では、美容師さんの実際の出費に当てはめて、どれをどう書けばいいのかを順番に説明します。
広告宣伝費とは「お客様を集めるために払ったお金」
そもそも経費とは何か。国税庁は必要経費になる金額を、こう説明しています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
難しく見えますが、言いたいことは単純です。売上をつくるために使ったお金は経費になる、ということです。
集客はまさに売上をつくるための行動です。ですから、広告や宣伝に使ったお金は経費になります。ここは迷う必要がありません。
科目の名前は「広告宣伝費」を使います。帳簿のどの欄に書くかという話であって、税金の計算そのものは科目名で変わりません。
美容師の広告宣伝費になるもの
- 集客サイトへの掲載料、送客手数料
- SNSの広告出稿費、投稿を広めるための課金
- 名刺、ショップカード、メニュー表の印刷代
- チラシの制作費とポスティング代
- 自分のサロンのホームページ制作費、ドメイン代、サーバー代
- 撮影を外注したときのカメラマンへの支払い
- 撮影モデルへの謝礼
- 予約サイトの月額利用料
- 店頭の看板、のぼり、ウィンドウサイン
- 新規のお客様に配る割引券の印刷代
面貸しや業務委託で働いている方も同じです。自分でお客様を集めているなら、その費用はご自身の経費になります。サロンが払っている分は、当然ですがご自身の経費にはなりません。
広告宣伝費にしにくいもの
注意が必要なのは、自分の生活と混ざっているお金です。国税庁は、生活と事業が混ざった費用についてこう書いています。
「この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。」
つまり、事業のために使った部分をはっきり分けられることが条件です。
- 「SNSに載せるから」という理由だけで買った自分の私服
- ふだんも使っているスマートフォンの通信費の全額
- 友人との食事代を宣伝と説明したもの
このあたりは、分けられるところまでが経費です。スマートフォン代のように事業と生活で共用しているものは、使った割合で分けます。分け方は経費の考え方のページにまとめています。
なお、お客様一人ひとりとの飲食は接待交際費という別の科目になります。ただし個人事業の場合、どちらの科目でも、事業のために使ったと説明できるお金であれば経費になります。科目選びで悩みすぎる必要はありません。
金額で扱いが変わる。10万円がひとつの目安です
ここからが本題です。看板やホームページのように、何年も使うものを買ったときは、払った年に全額を経費にできないことがあります。
国税庁の説明では、取得価額が10万円未満のもの、または使える期間が1年未満のものは、その年の経費に全額入れられます。10万円以上になると、原則として何年かに分けて経費にしていく計算になります。
ただし、金額と申告方法によって使える取り扱いが変わります。
| 1つあたりの金額 | できること |
|---|---|
| 10万円未満 | その年に全額を経費にできます |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として、合計額の3分の1ずつを3年間で経費にできます |
| 10万円以上40万円未満 | 青色申告で一定の要件を満たすなら、その年に全額を経費にできます(年300万円まで) |
3段目は青色申告をしている方の特例です。金額の上限は令和8年3月31日までに買ったものは30万円未満、令和8年4月1日以後に買ったものは40万円未満とされています。この特例は令和11年3月31日までに取得したものが対象です。
美容師さんの例で考えてみます。店頭に袖看板を28万円(税抜)で作ったとします。白色申告なら何年かに分けて計算しますが、青色申告なら今年の経費に全額入れられます。
もうひとつ大事な点があります。10万円未満かどうかを判定するとき、消費税を含めるかどうかは、ご自身の経理のやり方によります。税込で経理しているなら税込の金額で判定します。売上1,000万円以下で消費税を納めていない方は、税込の金額で判定することになります。
9万8千円の看板でも、税込にすると10万円を超えることがあります。ここは見落としやすいところです。
1年分を先に払った掲載料は、どう書くか
集客サイトの掲載料を、1年分まとめて前払いすることがあります。12月に払って、掲載期間は翌年の11月まで、というケースです。
原則を言うと、まだサービスを受けていない期間の分は、その年の経費になりません。12月末の時点で来年の分が残っていれば、それは来年の経費です。
ただし国税庁の通達には、例外の取り扱いがあります。払った日から1年以内に受けるサービスの分であること。そして、払った金額をそのまま払った年の経費にしていること。この場合は、その処理を認めるという内容です。
条件が2つあります。
- 払った日から1年以内に受けるサービスであること
- その処理を毎年続けていること
2つめが大切です。今年は利益が出たから全額経費にして、来年は期間で分ける。こういう使い分けは認められていません。一度決めたら毎年同じやり方を続けてください。
名刺やショップカードのまとめ買い
名刺やショップカードを、安くなるからと1,000枚単位で刷る方は多いと思います。年末に刷って、使い切るのは来年という場合もあります。
国税庁の通達では、広告宣伝用の印刷物などについて例外が認められています。毎年だいたい同じ数量を買っていて、いつも使い続けているものが対象です。その場合は、買った年の経費にしてよいとされています。こちらも、毎年同じ処理を続けていることが条件です。
毎年12月に名刺を刷り足しているような方なら、刷った年の経費で問題ありません。
開業前に配ったチラシ代は「開業費」になります
独立してサロンを持つ前に、チラシを配ったりSNSを立ち上げたりする方がいます。オープン前の告知は大事な集客です。
この費用は、開業した後の広告宣伝費とは少し扱いが違います。開業前に払った準備のためのお金は「開業費」としてまとめます。開業費は繰延資産という分類になります。
開業費の経費の入れ方は、60か月の均等償却か、任意償却のどちらかを選べます。任意償却というのは、金額の範囲内なら好きな額を経費にしてよい、という仕組みです。
国税庁の質疑応答事例では、任意償却について「その下限が設けられていないことから、支出の年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいと解されます」と示されています。さらに、まだ経費にしていない残りの金額は、いつでも経費に入れられるとされています。
これは実務でとても助かる仕組みです。開業1年目は売上が少なくて税金がほとんど出ない、ということがあります。そのときは開業費を使わずに取っておいて、利益が出た年に経費として使えます。
ただし条件があります。同じ質疑応答事例には、記録について注意書きがあります。払った開業費の内容と金額を明らかにしておくこと。そして、それを過去の年に経費にしていないことを明らかにしておくことです。
要するに、開業前の領収書を捨てないことです。開業準備の記録の残し方は記帳代行サービスのページでも説明しています。
面貸しの美容師さんの1年分を、並べてみます
イメージがわきにくいと思いますので、ひとつ例を出します。面貸しで働いている美容師さんの1年間の広告費です。金額はすべて税抜です。
| 内容 | 金額 | 扱い |
|---|---|---|
| 集客サイト掲載料(月20,000円×12か月) | 240,000円 | その年の広告宣伝費 |
| SNS広告(不定期) | 36,000円 | その年の広告宣伝費 |
| 名刺500枚・ショップカード1,000枚 | 18,000円 | その年の広告宣伝費 |
| 撮影のカメラマン外注(2回) | 60,000円 | その年の広告宣伝費 |
| 予約管理ツールの月額料 | 42,000円 | その年の広告宣伝費 |
合計で396,000円です。所得税と住民税を合わせた負担が仮に20%だとすると、およそ79,000円の差になります。額面は小さくありません。
この計算はあくまで目安です。実際の税率は所得の金額で変わります。ただ、広告費をきちんと拾うかどうかで手元に残るお金が変わる、ということは感じていただけると思います。
そして、この5つはどれも領収書が紙で残りません。カード明細や管理画面の中にあります。だからこそ抜けやすいのです。
今日からできるチェックリスト
難しい話が続きましたが、やることは多くありません。
- 集客サイトの支払い明細を、毎月ダウンロードして保存する
- SNS広告の課金はクレジットカードの明細だけで済ませず、管理画面の領収書も残す
- 印刷物のレシートには「名刺500枚」など中身をメモしておく
- 10万円以上のものを買ったら、その領収書は別にしておく
- 1年分の前払いをしたら、契約期間がいつからいつまでかを控えておく
- 開業前の領収書は、開業日より前とわかるようにまとめて保管する
特に3つめと5つめが大事です。レシートだけ見ても、後から中身を思い出せないことがよくあります。「名刺」「チラシ3,000枚」と一言書いておくだけで、確定申告のときの迷いがなくなります。
広告宣伝費は金額が大きくなりやすい科目です。集客サイトの掲載料だけで年間数十万円になる方もいます。取りこぼすと、その分だけ税金を多く払うことになります。
よくある質問
集客サイトの「掲載料」と「送客手数料」は、科目を分けたほうがいいですか。
分けても分けなくても構いません。科目の名前は法律で決まっているわけではないからです。掲載料を広告宣伝費、送客手数料を支払手数料とする方もいますし、まとめて広告宣伝費にする方もいます。どちらでも税金の計算は変わりません。大事なのは、一度決めた分け方を毎年変えないことです。
自分の撮影用に買った服やアクセサリーは経費になりますか。
ふだんも着られるものは難しいです。国税庁は、生活と事業が混ざった費用について、業務のために直接必要だったと明らかに区分できる金額に限ると説明しています。私服として使えるものは、その区分が説明しにくくなります。一方で、撮影のためだけに用意した小物や、モデルさんに着てもらった衣装なら、事業用として説明しやすくなります。使った日と用途を記録に残しておいてください。
ホームページを30万円で作りました。今年の経費にできますか。
青色申告をしていて一定の要件を満たすなら、令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満まで、その年の経費にできる特例があります。30万円ならこの範囲内です。ただし白色申告の場合はこの特例が使えません。また、制作の中身によっては扱いが変わることもあります。金額が大きいので、申告の前に一度ご相談いただくのが安心です。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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