美容師の開業届はいつまで?2026年から期限が変わりました

開業届の期限は「開業した年の確定申告期限まで」に変わりましたが、青色申告の申請書は今も「開業から2か月以内」のままです。
この2枚を同じ期限だと思い込むと、初年度の節税を丸ごと落とします。
「開業届って、開業から1か月以内に出さないといけないんですよね?」
独立したばかりの美容師さんから、よくいただく質問です。結論からお伝えすると、この説明は2026年からの開業には当てはまりません。国税庁の案内が変わっているからです。
この記事では、開業届の新しい期限、そして「期限が延びたからこそ危ない」もう一枚の書類について、順番に整理します。読み終わるころには、今週なにをすればいいかがはっきりします。
開業届とは?面貸しの美容師にも関係あります
開業届の正式な名前は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。税務署に対して「私はこの日から自分で仕事を始めました」と伝えるための紙です。
国税庁は、この届出書を出す人を「新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方」と説明しています。むずかしい言い方ですが、美容師さんに置きかえるとこうなります。
- サロンに面貸し料を払って、自分のお客様から施術代をいただいている
- シェアサロンに登録して、自分の売上として報酬を受け取っている
- 業務委託契約で、給与ではなく「報酬」として支払われている
- 自分のサロンをオープンした
このどれかに当てはまるなら、開業届の対象です。お店を構えていなくても関係あります。「自分はお店を持っていないから事業ではない」と考えている方が多いのですが、シザー1本で自分のお客様を持っているなら、それは立派な事業です。
逆に、サロンから「給与」として支払われている方は、事業ではなく雇われている扱いです。この場合は開業届の対象になりません。ご自身がどちらなのか分からないときは、毎月もらう明細に「給与」と書いてあるか「報酬」と書いてあるかを見てください。源泉徴収の仕方も変わってきます。
提出先は、納税地(多くの場合はお住まいの住所)を担当する税務署です。提出方法は、パソコンやスマホからのe-Tax、または紙に書いて持参・郵送のどちらでもかまいません。紙で出す場合はマイナンバーを書き、本人確認書類の提示か写しの添付が必要です。e-Taxで出すなら本人確認書類は不要です。
【2026年から変更】期限は「その年の確定申告の期限」まで

ここが今回いちばんお伝えしたい変更点です。
国税庁の現在の案内では、開業届の提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」となっています。届出書に添えられている国税庁の「書き方」にも、同じ内容が書かれています。
やさしく言い直すと、こうです。
「開業した年の確定申告をする、そのときまでに出せばいい」
確定申告の期限は、原則としてその年の翌年3月15日です。つまり期限は、開業した月によって変わります。
| 独立した時期 | 開業届の提出期限 |
|---|---|
| 2026年2月に面貸しで独立 | 2026年分の確定申告期限(原則2027年3月15日)まで |
| 2026年8月にシェアサロンへ登録 | 2026年分の確定申告期限(原則2027年3月15日)まで |
| 2026年12月に自分のサロンをオープン | 2026年分の確定申告期限(原則2027年3月15日)まで |
期限日が土曜・日曜・祝日にあたるときは、その翌日が期限になります。
これまで「開業から1か月以内」と説明されることが多かった書類です。「もう1か月過ぎてしまった、どうしよう」と焦っていた方は、いったん肩の力を抜いてください。2026年1月1日以後に事業を始めた方は、確定申告のタイミングまで時間があります。
なお、2025年12月31日までに開業された方は、当時の案内にもとづく取り扱いになります。まだ出していない場合は、今からでも提出できますので、ご自身のケースを税務署か税理士に確認したうえで早めに出しておきましょう。
期限が延びても急ぐべき理由。青色申告の申請書は「2か月」のままです
ここからが本題です。開業届の期限は延びました。でも、独立した美容師さんにとって本当に怖い締切は、実は別の書類のほうです。
「所得税の青色申告承認申請書」。青色申告をするために、あらかじめ税務署へ出しておく申請書です。この期限は今回の変更と関係なく、これまでどおりです。
| 開業した時期 | 青色申告承認申請書の期限 |
|---|---|
| 1月15日までに開業した場合 | その年の3月15日まで |
| 1月16日以後に開業した場合 | 事業を開始した日から2か月以内 |
| すでに事業をしている場合 | 青色申告をしたい年の3月15日まで |
つまり、6月に面貸しで独立した美容師さんの場合、開業届は翌年3月まで待てますが、青色申告承認申請書はその年の夏、開業から2か月以内に出さないといけません。同じ「独立したときの書類」なのに、期限がまったく違うのです。
この2か月を逃すと、その年は青色申告ができません。国税庁も「青色申告の場合には各種の特典があります」と案内しているとおり、青色申告には特別控除をはじめとした有利な取り扱いが用意されています。それが初年度まるごと使えなくなる、ということです。
もし2か月を過ぎてしまっても、翌年から青色申告に切り替えることはできます。その場合は、青色申告をしたい年の3月15日までに申請書を出します。初年度が白色になっても、そこで終わりではありません。
覚え方はシンプルです。開業届と青色申告承認申請書は、同じ日に2枚まとめて出す。これだけで期限の取り違えはなくなります。
美容師さんが開業届とセットで確認したい4つのこと

税務署への届出だけで独立の手続きが終わるわけではありません。美容師という仕事ならではの確認事項を4つ挙げます。
1. 自分のお店を構えるなら、保健所への届出が別にあります
美容師法では、美容所を開設しようとする者は、美容所の位置・構造設備・管理美容師その他の従業者の氏名などを、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならないと定められています(美容師法第11条)。
さらに第12条では、開設者は構造設備について都道府県知事の検査を受け、確認を受けた後でなければ、その美容所を使用してはならないとされています。内装が仕上がってから慌てて連絡するのではなく、図面の段階で管轄の保健所に相談しておくと安心です。
一方、面貸しやシェアサロンで、すでに届出のあるお店を使わせてもらう働き方の場合、美容所を開設しているのはお店側です。ご自身のケースがどちらに当たるかは、管轄の保健所にご確認ください。
2. サロンを退職して独立したなら、年金と健康保険の切り替えを
正社員としてサロンに勤めていた方が独立した場合、厚生年金から国民年金に切り替わります。日本年金機構は、国民年金第1号被保険者の資格取得届の提出期限を「退職日の翌日から14日以内」と案内しています。
健康保険も、国民健康保険に加入するか、勤めていた先の健康保険を任意継続するかを選ぶことになります。どちらの手続きも窓口が税務署ではありません。お住まいの市区町村や年金事務所です。開業届のことばかり考えていると、この2つを忘れがちです。
3. 白色申告でも、帳簿づけと保存は必要です
国税庁は、事業所得などを生ずべき業務を行うすべての方について、記帳と帳簿書類の保存が必要だと案内しています。これは白色申告の方も含みます。「青色じゃないから、レシートは捨てていい」ということにはなりません。
面貸し料、シザーやクリッパーの購入費、カラー剤やパーマ液の仕入れ、講習会の受講料、サロン移動の交通費。独立初年度はこうした支出が一気に増えます。開業した日から、レシートは月ごとの封筒に入れて取っておくだけでも後が違います。何が経費になるのかは経費の考え方のページにまとめています。
4. インボイスの登録は「開業した年のうち」がひとつの区切り
適格請求書発行事業者(インボイス)の登録については、国税庁の案内で、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする場合は、その課税期間中に申請することとされています。免税事業者が登録する場合は、登録希望日(提出日から15日以降の日)を書いて提出します。
ただし、登録するかどうかは別の判断です。面貸しで一般のお客様だけを相手にしている方と、サロンから業務委託報酬を受け取っている方とでは、事情が変わります。登録すると消費税の申告義務が生じますので、慌てて登録せず、取引先の状況を見てから決めてください。
なお、スタッフを雇って給与を支払う場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」の提出が別に必要になる場合があります。期限は開設の事実があった日から1か月以内です。ひとりで独立する場合は関係ありません。
提出までの手順とチェックリスト
実際の流れは4ステップです。順番にみていきましょう。
ステップ1:開業日を決める
事業を始めた日を書きます。面貸し契約を結んだ日、シェアサロンで初めてお客様に入った日、サロンをオープンした日など、ご自身が「ここから始まった」と説明できる日にします。青色申告承認申請書の2か月がこの日から数え始めるので、決めたら忘れないようにメモしておいてください。
ステップ2:出すものを用意する
- 個人事業の開業・廃業等届出書(国税庁サイトからダウンロードできます)
- 所得税の青色申告承認申請書(青色申告をするなら必須)
- マイナンバーカード、または本人確認書類(紙で出す場合)
ステップ3:e-Taxか、紙で提出する
e-Taxならスマホやパソコンから提出できます。紙の場合は、納税地を担当する税務署へ持参するか郵送します。税務署の開庁時間は8時30分から17時までですが、閉庁日でも時間外収受箱に投函すれば提出できます。営業が終わったあとに寄れるのは、シフトが不規則な美容師さんには助かるところです。
ステップ4:控えを残して、帳簿を始める
提出したら控えを保管します。紙の控えにマイナンバーを残さないよう、国税庁も注意を呼びかけています。控えを取るときはマイナンバー部分が写らないようにしてください。
そこまで済んだら、あとは日々の記録です。売上と経費を残していくだけですが、シザー1本でお客様に向き合いながら数字も管理するのは、正直かなりの負担です。開業サポートでは、届出書の作成から初年度の帳簿の立ち上げまで、まとめてお手伝いしています。
よくある質問
面貸しで週3日だけ働いています。それでも開業届は必要ですか?
日数の多さではなく、収入の性質で決まります。サロンに面貸し料を払い、自分のお客様からいただいた施術代がご自身の売上になっているなら、事業を始めた方に当たります。週3日でも、月に数回でも同じ考え方です。反対に、サロンから給与として支払われているなら、開業届の対象ではありません。明細の記載や契約書をご確認ください。
開業届を出したら、自動的に青色申告になりますか?
なりません。青色申告をするには「所得税の青色申告承認申請書」を別に提出する必要があります。開業届を出しただけでは白色申告のままです。期限は、1月16日以後に開業した場合で、事業を開始した日から2か月以内。開業届と一緒に出してしまうのがいちばん確実です。
去年独立したのに、まだ開業届を出していません。どうすればいいですか?
気づいた時点で提出しましょう。届出書は、いつ開業したかを書く欄がありますので、実際の開業日を書いて出します。過去の年分の取り扱いや、その年の申告をどうするかは事情によって変わりますので、税務署か税理士にご相談ください。放置して申告そのものをしないままにするのが、いちばん不利になります。
※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。
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