美容師の経費一覧2026|シザー・講習費・面貸し料はどこまで?

フリーランス美容師の経費を整理するシザーとレシート、電卓、スマートフォンのイラスト

「これ、経費にしていいのかな」と迷ったまま、レシートを捨てていませんか。美容師の仕事で使ったお金は、思っているよりも幅広く経費にできます。この記事では、シザーやカラー剤から面貸し料・講習費まで、何がどの科目に入るのかを一覧で整理しました。

そもそも「経費」ってどういうお金のことですか

確定申告の話になると、必ず出てくるのが「経費」という言葉です。むずかしそうに聞こえますが、中身はとてもシンプルです。

国税庁は、必要経費になるものを次のように説明しています。「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」と、「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」です。

美容師の言葉に置き換えると、「お客様を担当して売上をつくるために使ったお金」ということになります。カラー剤も、シザーも、面貸し料も、ぜんぶここに入ります。

経費が増えると、なぜ税金が下がるのか

確定申告では、まず「売上 − 経費」を計算します。ここで出てきた金額が「所得」です。所得税や住民税は、売上ではなく、この所得をもとに計算されます。国民健康保険料の計算にも、所得の金額が使われます。

つまり、仕事で使ったお金をきちんと経費に入れておくと、所得が下がり、そのぶん税金や保険料も下がります。逆に、本当は経費になるものを入れ忘れると、払わなくてよかった税金まで払うことになります。

ただし「使えば使うほど得」ではありません

ここは誤解しやすいところです。10万円のシザーを買っても、税金が10万円減るわけではありません。減るのは、その一部だけです。手元のお金は10万円、確実に減ります。

ですから「節税のために買う」のではなく、「仕事のために買ったものを、もれなく経費に入れる」。これが正しい順番です。

美容師が経費にできるもの一覧【勘定科目つき】

美容師が経費にできるシザーやカラー剤、タオル、ドライヤーを種類ごとに分類したイラスト

フリーランスの美容師によく出てくる支出を、勘定科目ごとにまとめました。勘定科目とは、帳簿につけるときの「仕分けの名前」のことです。名前が多少違っても、毎年同じ科目を使っていれば問題ありません。

使ったお金の例よく使う勘定科目ひとこと
面貸し料、席料、シェアサロンの利用料地代家賃/支払手数料契約書の呼び方に合わせます
カラー剤、パーマ液、シャンプー、トリートメント消耗品費仕事で使う分だけ
シザー、コーム、クリップ、ブラシ消耗品費1点10万円未満なら買った年に全額
ドライヤー、アイロン、クリッパー消耗品費/工具器具備品金額で扱いが変わります
タオル、クロス、ケープ、紙エプロン消耗品費まとめ買いもそのまま経費に
サロンで着る制服、エプロン消耗品費仕事専用のものに限ります
技術講習、セミナー、ディーラー講習の受講料研修費今の仕事の技術を伸ばすもの
美容の専門誌、技術書新聞図書費スタイルブックも同じ
サロンや講習会までの交通費旅費交通費日付と行き先をメモ
名刺、ショップカード、チラシ広告宣伝費デザイン代も含みます
掲載サイトの利用料、SNS広告広告宣伝費毎月の明細を保存
予約システム、キャッシュレス決済の手数料支払手数料売上から差し引かれる分も対象
スマホ代、自宅のインターネット代通信費仕事で使った割合だけ
美容師向けの賠償責任保険損害保険料年払いなら証券を保存
帳簿づけや確定申告を頼んだ費用支払手数料領収書を必ず保管
仕事用のウィッグ、コンテスト用の衣装消耗品費私用と分けられることが前提

面貸しで働いている方は、まず面貸し料をもれなく入れてください。毎月の固定費なので、金額としてはいちばん大きくなることも多い項目です。サロンから受け取る報酬明細に「席料」「場所代」として差し引かれている場合も、売上と経費の両方に計上するのが基本の形になります。

判断に迷いやすい4つの支出

ここからは、美容師の方からよく質問をいただくものです。「入れていい」と言い切れないものもあるので、正直に書きます。

  • 自分の髪のカット・カラー代、ネイル代/「自分が広告塔だから」という説明はよく聞きますが、身だしなみの費用は生活費と区別しづらく、経費にできると言い切れる根拠は見当たりません。迷ったら入れない、が安全です。
  • 洋服代/仕事以外でも着られる私服は、生活費とみなされやすい支出です。サロン指定の制服や、ロゴが入っていて仕事でしか着ないものは、経費として説明しやすくなります。
  • お客様や同業者との飲食代/仕事の話をした打ち合わせであれば経費になり得ますが、友人として会っただけの食事は対象外です。レシートの裏に「誰と・何の目的で」をメモしておくと、あとから自分でも判断できます。
  • 美容学校の学費、免許を取るための費用/これから美容師になるための支出は、事業の必要経費として説明するのが難しい部類に入ります。開業してからの技術講習とは扱いが変わる、と覚えておいてください。

共通するのは、「仕事のために必要だった」と自分の言葉で説明できるかどうかです。説明できる支出は堂々と入れて、説明が苦しいものは外す。この線引きができていれば大きく外しません。経費の考え方は経費のページでも整理しています。

シザーやシャンプー台は「10万円」がひとつの分かれ目

ここが、美容師の経費でいちばんつまずきやすいところです。同じ「買い物」でも、1点あたりの金額によって経費への入れ方が変わります。

国税庁の説明では、使用できる期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を、業務に使い始めた年分の必要経費にできるとされています。つまり10万円未満なら、買った年に一気に経費です。

10万円以上になると、原則は「減価償却」といって、数年に分けて少しずつ経費にしていきます。理容・美容機器の耐用年数は5年とされているので、たとえば5年かけて分けていくイメージです。ただし、それ以外の選択肢もあります。

1点あたりの金額使える方法
10万円未満(使える期間が1年未満のものも同じ)買った年に全額を経費にできます
10万円以上20万円未満減価償却のほか、3年で均等に経費にする「一括償却資産」も選べます。青色申告なら下の特例も使えます
20万円以上40万円未満(※)減価償却が原則。青色申告なら「少額減価償却資産の特例」で買った年に全額にできます
40万円以上(※)減価償却で少しずつ経費にします(理容・美容機器なら5年)

※印の金額には注意が必要です。青色申告者が使える「少額減価償却資産の特例」は、これまで1点30万円未満が上限でした。令和8年度の税制改正でこの上限が40万円未満に引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得したものから適用されます。令和8年3月31日までに買ったものは、これまでどおり30万円未満が基準です。年間の合計は300万円までという上限もあります。

この特例を使えるのは、青色申告をしていて、従業員数などの要件を満たす方です。ひとりで働いているフリーランス美容師なら、まず心配は要りません。白色申告のままだと、この特例は使えません。

美容師の具体例で見てみます

  • 6万円のカット用シザー/10万円未満なので、買った年に6万円をそのまま経費にできます。青色でも白色でも同じです。
  • 12万円のシザー/青色申告なら特例で、買った年に12万円を全額経費にできます。白色申告なら、3年で4万円ずつの一括償却資産にするか、耐用年数にわたって減価償却します。
  • 35万円のシャンプー台(令和8年5月に購入)/改正後の基準は40万円未満なので、青色申告なら買った年に全額を経費にできます。同じ35万円でも令和8年3月に買っていた場合は、当時の基準である30万円未満を超えるため、減価償却になります。

同じ道具でも、買った時期と申告の種類で結果が変わります。大きな買い物を検討しているなら、買う前に一度確認しておくと安心です。

自宅サロン・スマホ・車は「使った割合」で分けます

自宅サロンの家賃やスマホ代、車の費用を仕事用と生活用に家事按分するイメージイラスト

自宅の一部をサロンにしている方、予約対応にスマホを使っている方、出張カットで車を使う方は多いと思います。こうした「仕事にも生活にも使っているもの」の費用を、家事関連費といいます。

国税庁は、家事関連費のうち必要経費になるのは、「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」と説明しています。

やさしく言い直すと、「仕事で使った分を、根拠をもって分けられるなら、その分だけ経費にできる」ということです。この分け方を「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。

分け方の目安

対象分ける基準計算の例
自宅サロンの家賃面積の割合全体50平米のうちサロン部分が12平米なら24パーセント
電気代・水道代面積や使用状況シャンプーやタオル洗濯で使う分を見積もる
スマホ代使う日数や時間週7日のうち仕事で使うのが5日なら7分の5
車のガソリン代・保険料走行距離年1万キロのうち仕事が8千キロなら80パーセント

大事なのは、割合そのものよりも「なぜその割合にしたか」を残しておくことです。間取り図に色を塗ったもの、走行距離のメモ、1週間の使用状況を書いた紙。どれも立派な根拠になります。なんとなく5割、では説明ができません。

また、按分の割合は毎年見直す必要はありません。働き方が変わったときだけ変えて、変えた理由をメモしておけば十分です。

今日からできる、経費もれを防ぐ3ステップ

経費でいちばんもったいないのは、実際に使ったお金を「証明できないから入れられない」ことです。次の3つをやるだけで、かなり防げます。

ステップ1 仕事用の口座とカードを1つ決める

面貸し料の引き落とし、材料の購入、講習費の支払い。仕事のお金の出入りを1つの口座とカードにまとめると、それだけで通帳が帳簿の下書きになります。新しく銀行口座をつくらなくても、今使っている口座のうち1つを仕事用と決めるだけで構いません。

ステップ2 レシートはその場で撮って、1か所にためる

レシートは時間がたつと文字が消えます。買ったその場でスマホのカメラで撮り、現物は封筒や箱にまとめて入れておきましょう。分類はあとからで大丈夫です。

保存期間も決まっています。青色申告の場合、帳簿や書類は原則7年間の保存が必要で、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間でよいものもあります。白色申告の場合は、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿が7年間、それ以外の帳簿や請求書・領収書などの書類は5年間です。

もうひとつ注意したいのが、メールやウェブサイトで受け取った請求書・領収書のデータです。こうした電子取引のデータには、電子帳簿保存法によってデータのまま保存する決まりがあります。印刷して紙で持っておけば安心、とは限らないので、受け取ったファイルはフォルダを決めて保存しておきましょう。

ステップ3 月に1回、まとめて入力する

1年分を2月にまとめてやるのがいちばんつらいやり方です。給料日や面貸し料の支払日など、毎月決まった日に少し時間をとって入力する。これだけで、確定申告の時期がまるで別物になります。

入力する時間そのものを減らしたい方は、記帳代行を使う方法もあります。レシートを送るだけで帳簿にしてもらえるので、営業時間をカットに集中できます。

年末までに見直すチェックリスト

  • 面貸し料・席料の明細が、1月から全部そろっているか
  • カラー剤や材料をディーラー以外から買った分のレシートが抜けていないか
  • 講習会・セミナーの受講料と、そこまでの交通費を入れたか
  • スマホ代・家賃・車の按分の割合と、その根拠をメモに残したか
  • 10万円以上のものを買っていないか(買っていたら処理の方法を確認)
  • メールで届いた請求書のデータを、消さずに保存しているか

よくある質問

レシートをなくしてしまいました。経費にできませんか。

帳簿と書類を保存しておくのが原則なので、まずはなくさない工夫が大切です。そのうえで、クレジットカードの明細や通帳の記録から、日付・支払先・金額・内容がわかることもあります。何に使ったかを自分でメモに残し、あとから説明できる状態にしておきましょう。今後のために、買ったその場でスマホで撮る習慣をつけるのがいちばんの対策です。

開業する前に使ったお金は経費になりますか。

開業の準備のために支出した費用は「開業費」として扱えます。国税庁の質疑応答事例では、開業費の償却は60か月の均等償却か任意償却のいずれかによるとされ、任意償却には下限が設けられていないため、支出した年に全額を償却してもよいと解されると示されています。ただし、その内容と金額を明らかにしておく必要があります。なお、シザーなどの道具そのものは金額によって減価償却の対象になるなど扱いが分かれるため、何がどちらに当たるかは個別に確認するのが安全です。

経費をたくさん計上すれば、税金はゼロにできますか。

実際に使っていない支出を経費にすることはできません。また、経費を1万円増やしても減る税金はその一部だけで、出ていく1万円のほうが大きくなります。無理に増やそうとするより、実際に仕事で使ったお金をもれなく拾うほうが確実です。売上が伸びている方は、青色申告や各種の控除を組み合わせるほうが効果があります。

※この記事は一般的な取り扱いをまとめたものです。制度は改正されることがあります。ご自身のケースについては個別にご相談ください。

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